アスファルト突き破って

咲き乱れる花は

エイリアン

王国は生き絶えて

肉が溶けて剥き出しになった背骨の上を

冷たい列車が走ります

静脈管へと続く毛穴マンホールに

殺人犯が逃げ込みます

電柱どもが毛深く乱立します

硬ったい皮膚にへばりついて

養分を吸い取る家屋の隙間を

うじみたいなじんるいが這っています

訳もわからないまま

必死こいて生きています

そして王国のどこかには

底の見えない真っ暗な

巨きな口があいています

甘美な風が吹いている

名も知らない少女が

ベランダでびしょ濡れた舌を干した日

ありとあらゆる名詞が町に漂った

何でもない振りをして消えていった

少女が青白い瞼の裏に隠した昨日や

行間に住むるんぺんの尖った眼差しや

天井に張り付いた犬のふやけた顔付きや

花屋の手に拓かれた荒野に散らばる

星の蝶形骨や

いつまでも地面にへばり付き腐っている

茶色い線路や

少女の手のひらを銀色に濡らした

片道分の硬貨

それらすべての名詞が悲しく漂っていた

なぜ僕たちは一度破り捨てた抜け殻を

洗濯してはもう一度着るのだろう

退屈なランチを終えて

紙パックのミルクティーが透ける

ビニール製の外付け臓器をぶら下げて

ドブの中を歩いている

瘡蓋を開け閉めしては

ヴァンパイアに会釈する

矢印が方角を刺殺して返り血を浴びて

真っ赤

死んだ方角へと

消えていく

顔の無い男が(顔が無いので男か女か分からないけれど)顔の無い人間が(顔が無いので人間なのかどうなのか分からないけれど)顔の無い何かが(何かなので顔という概念があるのかどうなのか分からないけれど)僕を嘲笑う(顔が無いので笑っているのかどうなのか分からないけれど)

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